2014
共鳴世界
コレクション・クッキング 近くを視ること/遠くに想いを馳せること − 対話と創造
福島県立美術館、福島市、福島
2014年 7月19日 − 9月15日
2014
共鳴世界
コレクション・クッキング 近くを視ること/遠くに想いを馳せること − 対話と創造
福島県立美術館、福島市、福島
2014年 7月19日 − 9月15日
アーティスト・ステートメント
共鳴世界
「共鳴動作」という言葉がある。例えば母親が赤ん坊に向かって笑顔で語りかけると、 赤ん坊も笑顔になる。反対に母親がイライラして不機嫌な表情になると、赤ん坊の顔は曇り、しまいには泣き出してしまう。赤ん坊は母親の語りかけに自ら同調し、表情や動作を反復して模倣し、共鳴しながら、その根源にある人間的情緒をも掴み取っている。無理をせず、自然に、人間としてのすべてを会得して成長する無垢な赤ん坊の可能性こそ、人間本来が持っている可能性そのものである。
マックス・エルンスト『博物誌』とのコラボレーションでは、シュルレアリスムの巨匠 であるエルンストが母となり、私はその表情や行為を「共鳴動作」する赤ん坊になる。母がみせるスケールの大きな風景や得体の知れない生物は、私の芸術作品が広がる速度を加速させ、宇宙へと誘う。母の語る文学的連想は、私の内的経験を変容させ、未来を示唆する言葉を連呼させる。
この「現実」のあらゆる事象を母とすれば、芸術家はそれらを模倣する赤ん坊となる。 エルンストは生涯に渡ってさまざまな手法を探求しており、木材や布などの素材に紙をあて、鉛筆で擦って肌理を写し取る「フロッタージュ」もそのひとつである。私は水彩・セラミック・合成樹脂・漆・布など多彩な素材を用いて、「現実」の多様で複雑な事象と対峙し、模倣し、共鳴し、その根源を掴んで創造する。
こうした「現実」との「共鳴動作」によって導き出された芸術作品は、無意識的に人間の根源にある思いや願いを合わせ鏡のように映し出していく。そこには、目の前にある小さなきっかけや人間の衝動、そして勇気から立ちあらわれる、「現実」を超えた大きな可能性と希望に溢れた世界がみえる。それこそが「共鳴世界」である。
古川弓子
概要
このインスタレーション「共鳴世界」は、福島県立美術館の収蔵作品であるマックス・エルンスト作『博物誌 (1926)』とのコラボレーションです。エルンストのフロッタージュによる連作から、古川は福島の今を予言しているような世界感を感じました。福島が故郷である彼女が、幼いころに知る風景を、エルンストによって新しく書き換えるようなプロセスを、この展覧会によってみることができました。
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