古川弓子(1975年 福島県生まれ)は現在、グアムと東京を拠点に現代美術家として活動しています。
2000年から2010年にかけて、彼女の初期作品は、ドローイング、絵画、彫刻、インスタレーション、パフォーマンスをとおして、文学と視覚芸術の間の架け橋として、言語がどのように知識やコミュニケーションを形成するかを探求していました。
しかし、2011年の東日本大震災やスーパー台風などの自然災害を経験し、彼女の作品のテーマは大きく転換しました。予期せぬ出来事が新たな芸術の創出の契機となったのです。同時に、アーティストは生きる者の集合意識から、世界の変化を予知するかのような作品を生み出していたことに気がつきました。彼女は現在、生と死、宇宙と繋がる生命に焦点を当てています。
古川の作品は、鉛筆、紙、水彩、油彩、木、セラミック、樹脂、布、スプレーコーティングなどの多様な素材を駆使して制作されます。
これらの作品は、黒と白、硬さと柔らかさ、不透明性と半透明性、幾何学的形状と有機的な形状を兼ね備えるなど、相反する特性を同時に持ち合わせています。そして、鑑賞者との親近感を持ちつつも距離感を保ち、神秘的な存在感を放っています。彼女は、その魔法ような作品が、世界を良き方向へと変える力を持っていると深く信じています。
宇宙に繋がる絵画、
地球に立つための彫刻
地球に立つための彫刻
絵画はなぜ、未来を映し出すのだろうか。
そしてなぜ彫刻は、地球に産み落とされるのか。
その答えは、芸術が現代社会と文化的な課題に対峙し、未来の方向性を示す使命を果たすからである。そして芸術家が人々の集合意識を代弁することで、同苦と癒やし、そして慈愛の姿へと導くことである。
故郷である福島から、私は随分と遠いところで作品を制作している。長らく住んでいた、ニューヨークからも遠く離れている。グアムは太平洋に浮かぶ小さな離島で、目の前の窓からみえる地平線は地球上のどの大陸ともつながっている。だからゆえに、現代社会の様相が最初に現れる場所は、離島である。地球および気候の変動による自然災害を、島に住む者たちが未然に防ぐことはできない。コントロールできない自然と同じように、人類の加速もまた制御できない。
グアムのスタジオでは、エアコンの室外機の音、鉛筆が紙の上をスクラッチし、ガラス瓶の洗筆器のなかで筆が回る音が微かに聞こえる。私の作品は、このような島で生きる経験から生まれている。芸術家として、絵画と彫刻を通じて、現実と異界を行き来する精神的な世界を表現し、風景の記憶と共に自動筆記のように描いている。1920年にアンドレ・ブルトンが “Surrealist automatism”(シュルレアリズム 自動記述)として経験したものと、私の制作プロセスが一致するかどうかは、誰にもわからない。ただ、私のスタジオでは、 “Automatic writing”(自動筆記)や “Free writing”(自由筆記)のような作業が続いていく。そして、海と大気の様子が変化していくのを描いていた画面のなかで、眼を描き出した夜には、台風 Marwar が上陸した。全てが偶然と必然の結びつきからのインスピレーションが、私を完成作品へと導いている。そして、自己の身体性と精神が分離していく時に、触覚が過敏になり、彫刻が成形されていく。私は粘土の重さと滑りを感じながら、細胞と海を形づくる。そして日本にある友人の工房で、地平線を感じながら、朝焼けから夕焼けの色の着色をした化学樹脂を流し込み、地球の地層のように積み重ねる。
地球が彫刻を産み落とし、自分自身の身体と繋がる。そして、宇宙が絵画をとおして、私の精神と繋がろうとする。だからこそ、私は作品をつくる。
2024年2月5日
古川弓子
宇宙に繋がる絵画、地球に立つための彫刻
絵画はなぜ、未来を映し出すのだろうか。
そしてなぜ彫刻は、地球に産み落とされるのか。
その答えは、芸術が現代社会と文化的な課題に対峙し、未来の方向性を示す使命を果たすからである。そして芸術家が人々の集合意識を代弁することで、同苦と癒やし、そして慈愛の姿へと導くことである。
故郷である福島から、私は随分と遠いところで作品を制作している。長らく住んでいた、ニューヨークからも遠く離れている。グアムは太平洋に浮かぶ小さな離島で、目の前の窓からみえる地平線は地球上のどの大陸ともつながっている。だからゆえに、現代社会の様相が最初に現れる場所は、離島である。地球および気候の変動による自然災害を、島に住む者たちが未然に防ぐことはできない。コントロールできない自然と同じように、人類の加速もまた制御できない。
グアムのスタジオでは、エアコンの室外機の音、鉛筆が紙の上をスクラッチし、ガラス瓶の洗筆器のなかで筆が回る音が微かに聞こえる。私の作品は、このような島で生きる経験から生まれている。芸術家として、絵画と彫刻を通じて、現実と異界を行き来する精神的な世界を表現し、風景の記憶と共に自動筆記のように描いている。1920年にアンドレ・ブルトンが “Surrealist automatism”(シュルレアリズム 自動記述)として経験したものと、私の制作プロセスが一致するかどうかは、誰にもわからない。ただ、私のスタジオでは、 “Automatic writing”(自動筆記)や “Free writing”(自由筆記)のような作業が続いていく。そして、海と大気の様子が変化していくのを描いていた画面のなかで、眼を描き出した夜には、台風 Marwar が上陸した。全てが偶然と必然の結びつきからのインスピレーションが、私を完成作品へと導いている。そして、自己の身体性と精神が分離していく時に、触覚が過敏になり、彫刻が成形されていく。私は粘土の重さと滑りを感じながら、細胞と海を形づくる。そして日本にある友人の工房で、地平線を感じながら、朝焼けから夕焼けの色の着色をした化学樹脂を流し込み、地球の地層のように積み重ねる。
地球が彫刻を産み落とし、自分自身の身体と繋がる。そして、宇宙が絵画をとおして、私の精神と繋がろうとする。だからこそ、私は作品をつくる。
2024年2月5日
古川弓子
“もう一つの作品はポリエステルで固められ封印された福島沿岸の海だ。この中には目に見えない何が入っているのだろう。
問題は何一つ解決していない。その怒りと絶望をもとに、芸術家として生きていく古川さんの作品は声なき叫びを上げ続けている。”
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ニュース&ストーリーズ
古川弓子『Pressure』展:オンライン開催中
2023年8月にグアムCAHAギャラリーで開催された個展『Pressure』の様子をウェブサイト上で公開いたしました。
パシフィック・フューチャリズム:グアム大学 第45回 研究会議
パシフィック・フューチャリズム(太平洋未来派)という大変興味深いタイトルのグループ展へ参加します。
古川弓子個展『Pressure』Guam CAHA Gallery にて開催
Guam CAHA Gallery にて古川弓子個展『Pressure』を開催いたします。